悩みタイトル

体の片側の皮膚に、ピリピリ、チクチクとした違和感や痛み、かゆみ、しびれを感じることがある。発疹が出る数日前から症状が現れる場合がある。
痛みを感じていた部位に、虫刺されのような赤い発疹が現れる。神経の通り道に沿って、帯状に広がる傾向がある。
赤い発疹の上に、小豆大ほどの透明な水ぶくれが複数現れることがある。時間の経過とともに、濁ったり中央がくぼんだりする場合がある。
痛みや発疹は、体の左右どちらか一方にのみ現れることが多い。体の中央を越えて反対側まで広がることはほとんどない。
皮膚症状の前後に、微熱や頭痛、全身のだるさ、リンパ節の腫れなどを伴うことがある。

これらの症状が複数当てはまる場合、帯状疱疹の可能性が考えられます。

帯状疱疹後に対する当院の考え

帯状疱疹とは、体内に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化することで、皮膚に痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれが、帯状に現れる疾患です。日本人では、80歳までに約3人に1人が発症するとされています。

原因
子どもの頃に発症した水ぼうそう(水痘)のウイルスは、症状が治まった後も神経節に潜伏し続けます。加齢や疲労、ストレスなどにより免疫力が低下した際に、ウイルスが再び活動を始めることで発症すると考えられています。

症状
初期症状
皮膚の違和感や、ピリピリ、チクチクとした神経痛のような痛みから始まることがあります。

皮膚症状
痛みに続いて、体の左右どちらか一方に沿って、赤い斑点や小さな水ぶくれが帯状に広がる傾向があります。

経過
症状のピークは1~2週間程度で、通常は4~8週間ほどで落ち着くことが多いです。

医療機関での対応
発症後は、できるだけ早く内科を受診し、抗ウイルス薬を服用することで、ウイルスの増殖を抑えることが大切とされています。目安としては、発症から3日以内の受診が望ましいとされています。あわせて、痛みに対して鎮痛薬が処方される場合もあります。

予防について
予防策として、2025年4月より、原則65歳を対象に帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始されました。一部公費負担で接種でき、発症や重症化、後遺症の予防が期待されています。

帯状疱疹後を放っておくとどうなるのか

帯状疱疹をそのままにしていると、強い痛みが数か月から数年以上続くことがある「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症が生じる可能性が高まると考えられています。

帯状疱疹後神経痛(PHN)
皮膚の症状である赤みや水ぶくれが落ち着いた後も、ウイルスによって影響を受けた神経の痛みが残る状態です。
・痛みの期間
数か月続く場合があり、人によっては10年以上、あるいは長期間続くこともあります。
・痛みの質
刺すような痛みや、焼けるような痛みと表現されることがあり、日常生活に支障をきたす場合があります。

合併症について
発症する部位によっては、感覚器官や神経に影響が及ぶことがあります。
・顔面や目の周辺
角膜炎や結膜炎を引き起こすことがあり、重症化すると視機能に影響が出る可能性があります。
・耳の周辺
難聴や耳鳴り、めまい、顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)を伴う場合があります。
・その他
運動神経への影響により歩行が困難になることや、脳炎、髄膜炎などの重篤な状態に至る可能性も考えられます。

他者への感染について
帯状疱疹そのものが人にうつることはまれですが、水ぼうそう(水痘)にかかったことがない方、特に乳幼児に対しては、水ぼうそうとして感染する可能性があります。

受診の目安として72時間が重要です
ウイルスの増殖は、発症から72時間(3日)以内にピークを迎えるとされています。この期間内に抗ウイルス薬による医療機関での対応を開始することで、重症化や後遺症のリスクを抑えることが期待されています。
「少しピリピリする程度だから」「痛みが強くないから」と自己判断せず、早めに医療機関へご相談ください。

帯状疱疹後の軽減方法

帯状疱疹の症状の軽減や、回復までの期間を穏やかに過ごすためには、医療機関での薬物療法と、自宅での適切なケアを併用することが大切と考えられています。

痛みを和らげるためのポイント

・患部を温める
血管が広がり、血流が促されることで、痛みが和らぐ場合があります。

・入浴
湯船に浸かって全身を温めることで、体がリラックスしやすくなります。

・カイロや蒸しタオル
痛みが強く感じられる部位に当てることで、違和感の軽減が期待できます。ただし、低温やけどには十分注意が必要です。

・注意点
患部を冷やすと血流が滞りやすくなり、痛みが強まったり長引いたりする可能性があるため、避けたほうがよいとされています。

・ビタミンB12の摂取
傷ついた神経の働きをサポートする栄養素として、ビタミンB12(メチコバールなど)が、痛みの緩和に役立つ場合があります。

・控えたいもの
神経を刺激して睡眠の妨げになりやすいカフェイン(コーヒーや緑茶など)や、免疫機能に影響を与える可能性があるアルコールは、できるだけ控えることが望ましいとされています。

帯状疱疹後の軽減に効果的な当院の施術メニューは?

帯状疱疹による痛みが出ている時期には、まず皮膚科や内科を受診していただき、塗り薬や痛み止めなどの薬物療法を受けることが大切です。そのうえで、神経症状に対する施術を併用し、痛みの軽減を目指していきます。

① 鍼灸
神経痛やチクチクとした違和感、不快感の軽減が期待できます。特に症状の初期段階から施術を行うことが可能で、医療機関での薬物療法と並行して行うことで、強い痛みに対しても軽減が期待されます。帯状疱疹は、ストレスをきっかけに発症するケースも多いとされているため、自律神経のバランスや体質に配慮した全身調整を目的とした鍼施術もおすすめしています。

② 血流調整プログラム
しびれを引き起こす要因の一つとして、血行不良が挙げられます。血管内に老廃物がたまりやすくなることで、神経への負担が増し、痛みにつながる場合があります。そのため、血流に着目した施術を行い、痛みの軽減を目指します。ただし、皮膚症状として発疹や水ぶくれが見られる場合には、細菌感染のリスクが考えられるため、そのような場合には鍼灸による対応をおすすめしています。

その施術を受けるとどう楽になるのか

これらの施術を受けることで、以下のような作用が期待されます。

① 鍼灸
・鎮痛作用
鍼による刺激により、脳内の鎮痛に関わる物質であるエンドルフィンなどの分泌が促されます。その結果、神経の興奮が穏やかになり、鋭い痛みや不快感の軽減が期待されます。

・血流促進と神経の回復をサポート
患部周辺や、関連する神経の通り道である脊髄付近に施術を行うことで血流が促されます。これにより、ウイルスの影響を受けた神経組織の回復を後押しする作用が期待されます。

・急性期の症状への対応
皮疹が現れる初期段階から施術を行うことで、症状の早期軽減や、後遺症のリスクを抑えることにつながる可能性があります。

② 血流調整プログラム
血流調整プログラムについても、鍼灸施術と同様に鎮痛作用が期待され、しびれや血流障害に対して役立つ場合があります。鍼灸施術とは異なり、血流に着目した施術を中心に行う点が特徴です。継続して行うことで血行が整いやすくなり、鍼灸施術と同様に体の抵抗力を支える働きが期待されます。また、体温の上昇や冷えに対する変化を感じる方もいらっしゃいます。

ただし、手技を用いた施術となるため、皮膚症状が見られる場合には控えたほうがよいと考えられます。

軽減するために必要な施術頻度は?

痛みが強い場合には、毎日、または2日に1回程度のペースでの施術をおすすめしています。症状が強い時期は、施術によって一時的に痛みが和らいだとしても、翌日には再び痛みが出てくることが多いためです。

発疹が落ち着いた後も、週に2~3回程度のご来院が望ましいと考えられます。症状が落ち着いてきた場合でも、1~2週間以上間隔が空いてしまうと、筋肉の硬さなどが残っている場合には、再び痛みが出てしまう可能性があります。

そのため、自己判断で通院間隔を空けるのではなく、その都度ご相談いただきながら、再発予防を意識して施術を継続していくことが大切です。